ジュニアと心臓震盪(4) ≪心臓震盪が疑われる場合の対応フローチャート≫
・〇〇と△△をチェック!
・胸骨圧迫からスタート
・フローチャートを常に携帯しよう!
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【選手が倒れたときの対応】
実際に、選手が現場で倒れたとしましょう。そのとき、まず意識と呼吸を確認してください。意識が無く、呼吸が無い、もしくは死戦期呼吸(苦しそうな呼吸)が見られる場合、心臓震盪を強く疑います。
心臓震盪が疑われたら、まず2人の人に命令をします。ひとりには「119番で救急隊を呼んでください」もうひとりには「AEDを持ってきてください」と伝えます。同時に、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めます。胸骨圧迫する部位は、ウルトラマンのカラータイマーの位置。両方の手のひらを重ねて1分間に100回以上行います。
胸骨圧迫の深さは成人5センチ以上、小児5センチ、乳児4センチ。胸骨圧迫を行いながら、AEDと救急隊の到着を待ちます。AEDが到着したら、AEDのガイダンスに従って操作します。
気道確保と人工呼吸は、2010年の改定で「訓練された救助者がその場にいる場合は行う」に変更されています。改定前は、まず気道確保、そして人工呼吸を行いながら心臓マッサージ、という流れでしたが、感染症の問題や手技の経験の問題が大きな壁となり、気道確保や人工呼吸の時点で時間ばかりが経過していました。肝心の胸骨圧迫に行きつかない現状があり、改定後は何よりも胸骨圧迫を優先し、血液の中に残っている酸素を脳に送ることを優先する流れになりました。(注:最新情報を必ずチェックしてください)
脳自体には、酸素を蓄える機能がなく、低酸素の状態が4~5分以上続くと脳は不可逆的なダメージを負い、死に至る率が高まるといわれています。命を救うには、脳に血液を送り込み酸素を与えることが優先されるのです。「呼吸停止後、血液の中の酸素の濃度が十数分は変化しない」という医学的根拠や、「人工呼吸を施行した例と、人工呼吸を施行しなかった例で蘇生率にほとんど変化がない」という研究からも、胸骨圧迫をすぐに始めることが必須で2011年春に日本国内でも新ガイドラインに統一されました。
「意識が無い、呼吸が無い(または異常な呼吸)状態なら、まずは胸骨圧迫からスタート」
これならできそうな気がしませんか? これはぜひとも覚えておいてください。
また、海や川での合宿での水の事故や、子供に関しては、気道確保と人工呼吸を併用したほうが望ましいとされています。水の事故では血液中の溶存酸素が少ないこと、子供の場合は血液の量が少ない分、溶存酸素が相対的に少ないことが理由です。
ですから指導者は胸骨圧迫、気道確保、人工呼吸、AED操作。指導者やセコンドなど責任ある立場の方は、最低でもこれらを冷静に遂行できるようにしておきましょう。
最近は、保護者の方の関心が高まっており、格闘技医学の講習会に参加してくださる方が増えてきました。保護者の方の場合、わが子がこのような状況になると必ずパニックに陥りますので、他の子の場合に行うように道場の保護者間で相互補完できる状況をつくっておきましょう。
≪心臓震盪が疑われる場合の対応フローチャート≫
意識がない、呼吸がない(苦しそうな呼吸)
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迅速に1人にAEDの準備を、別の1人に救急車の要請を指示
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C胸骨圧迫をスタート(できる場合はA気道確保とB人工呼吸を行う)
(Cのみ)C胸骨圧迫は1分間に100回以上。深さは成人5センチ以上、小児5センチ。
(C+A+B)C30回+B2回。ただし、Cの中断時間は10秒以内。ペース、深さはCのみと同様。
↓
AEDの到着と同時に、AEDを使用。C(C+A+B)を継続しながら救急隊の到着を待つ。
(5へ続く)
ジュニア格闘技・武道「安心安全」強化書より