スポーツ安全指導推進機構/格闘技医学会

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GO三浦 崇宏×Dr.F 越境対談 その1 ~言葉を変えると思考が変わる~ 

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──今回は大変興味深い顔合わせになりましたね。お2人ともどうぞよろしくお願いします。

 

Dr.F よろしくお願いします。三浦さん、本当にお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます!

 

三浦 いえいえ、楽しみにしていました。僕も格闘技を通して学んだことが、すごく仕事に生きている部分があるんです。

 

Dr.F それでは三浦さん、まずは自己紹介からお願いできますか?

 

三浦 はい。The Breakthrough Company GOの代表の三浦です。ここでは経営者をやりながらPR・クリエイティブ・ディレクターもやっています。あとはビジネス芸人として、「NewsPicks」や「新R25」、一部TV番組のコメンテーターなどもやらせていただいております。東京出身で、幼稚園から高校まで暁星学園に通っていて、大学は早稲田大学です。中学1年から大学1年まで柔道部にいまして、右組み・左組みのスイッチスタイルでした。

 

Dr.F そうですか!

 

三浦 早稲田大柔道部では1年上に青木真也選手がいて、「これはもうやってられないな」と思ってすぐにやめました(笑)。

 

 新日本プロレス、UWF、UWFインターナショナルが好きで、その先のPRIDE、DREAM、RIZINやONEなどの総合格闘技と、プロレスは本当に好きです。最近ではDDTも見ます。大学卒業後は博報堂に入って、最初はマーケティング、それからPR、クリエイティブと変わって、10年在籍の後に独立しました。

 

 今の「GO」という会社は30人ぐらいの規模なんですが、「社会の変化と挑戦にコミットする」ことをテーマにしていて、企業が変わりたいとか新しい挑戦をしたいというときにお手伝いをする……広告でや、新しい事業を作ったり、企業のブランディングをしたりといった手法で企業の変化と挑戦を支援している会社です。

 

Dr.F 伺いたいことだらけですが、まずは格闘技経験の部分について、詳しくお話しいただけますか?

 

三浦 中高は柔道部だったんですが、進学校だったし僕は身体的にも優れているというわけでもないので、「できるだけ練習量も少なくしてどう勝つか」ということをものすごく考えたんですね。結局、柔道の練習をしていては柔道の強豪に勝てるわけがないので、レスリングや柔術総合格闘技の練習を取り入れたんです。

 

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 ルールから逸脱した新しい勝ち方を見つけるということを中高6年間ずっとやっていて、僕らの会社は大手の広告会社と競合関係にあっても、現場で競り負けるということがほとんどないんですよ。それは今思えば、当時培ったものが生きているのかなと思います。

 

──Dr.Fとはどのようなつながりなんでしょうか?

 

三浦 二重作先生のことはツイッターでお見かけして、糸井重里さんとの対談などを読ませていただきました。その中で「思考を切り替えることで体の動きも変わる」というお話が出てきて、僕も常々「言葉を変えると企業は変わる」ということを言っていたので、通じるものを感じました。

 

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(ほぼ日刊イトイ新聞 「強さの磨き方」より)
 

 「思考を変えると言葉が変わる」あるいは「言葉を変えると思考が変わる」、それが結果的に体の変化につながるというお考えにすごく共鳴していて、それをご自分の体を通じて実験されていることにもものすごく関心がありますし、今日はリモートですけども、いずれは直接お会いして指導を受けさせていただきたいなと思っています。

 

Dr.F ありがとうございます。早くも金言満載ですね!僕は、三浦さんを落合陽一さんとの対談動画などで存在を認識していました。失礼ながら著作を読んでいなかったので、ツイッターで知り合ってからすぐに『人脈なんてクソだ。 変化の時代の生存戦略』を即買いしまして、拝読しました。

 

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 決して宣伝で言うわけではなく、「今の時代はどんな時代なのか?」ということを、ハッキリと、誰にも分かる言葉で書いてくださっている本だなというのが、最初に実感したことでした。

 

三浦 ありがとうございます。

 

Dr.F 格闘技でも社会でもそうだと思うんですが、「今がどういうリングなのか」ということが分かっていないと戦えないじゃないですか。例えば、今からポケベルの打ち方を一生懸命練習しても、もうその時代は来ないということはハッキリしてるわけです。

 

 一方で、サッカーをやっている人がいきなり「明日からラグビーをやります」と言われる時代に我々は生きているんだという時代認識を、三浦さんは鋭敏に捉えていらっしゃる。これは今生きている全ての人にすごく必要な感性だな、と感じたんです。

 

 あとは、「言葉による再定義」を自分でガンガンやってらっしゃるところにすごく共感しました。僕がツイッターで格闘技のことを書いたときに、三浦さんがパッと「もっと格闘技のことを学びたい。何かできることはないか」というコメントをくださったんですが、僕からしたらもう、今の時代をリードしてる側の三浦さんがそういう反応をくださったことに感動したんです。

 

三浦 僕は実際、二重作先生のゼミとか、体の使い方のワークショップとかがあったら受けたいんです。「パンチは押すだけではなく引きつける力が大事」とか「正拳突きは体幹で突かないと意味がない」とか、メチャクチャ興味深いじゃないですか。

 僕自身、自分の世界をどこまで自分と捉えるかによっていろいろなことが変わってくるし、そういうことがすごく重要だと思ってるんですよ。

 

Dr.F ああ、すごくよく分かります!

 

三浦 格闘技の言葉って独特ですよね。「腰を切る」とか。

 

Dr.F ありますね。「タメが大事」とか。

 

三浦 ああいうのって、やってみると分かるじゃないですか。会社にも、その会社なりの体の言葉というものがこれからは必要なんじゃないかと思っていて、例えば……「腰を切る」って柔道をやっている人なら誰でも分かる言葉ですけど、一般の方には分からないですよね。でも「腰を切る」っていう言葉によって、僕ら柔道をやっている人間は、体の動きをコピーしていく。

 

 広告会社で言うと、「越境する」という言い方をすごくよくするんです。コピーライターがコピーのことだけでなくデザインのことまで考えるとか、デザイン側が営業のことも考えるとか。自分の職能以外のところに、自分の職能で責任を持って何らかの意見を言ったり取り組んだりすることなんですが、これはすごく重要なことだと捉えられているんです。でも「越境する」って、一般社会ではそういう意味では使われないじゃないですか。

 

Dr.F そうですね。

 

三浦 格闘技における体の言葉みたいなものがビジネスにもあると、ビジネスがもっと伸びるんですよ。この「越境する」って、他の会社では言わないんですよ。競技独特の身体言語が落ちてくるみたいなことが、企業文化にも重要だなという気がしていて。

 

Dr.F なるほど! それはすごく興味深いところで、その「腰を切る」という言葉ですが、その感覚は定義づけはないんです。だからA先生の「腰を切る」とB先生の「腰を切る」が「動きとしては全く違う」ってことが、よくあるんです。

 やってる人たちの共通言語に見えて、各流派のローカル言語になっていたり。例えば「かかと落とし」という技がありますよね。あれはオリジンとしてはテコンドーの技なんですけど、それを倒し合いに持ち込んだのはアンディ・フグで、極真の第4回世界大会で出したんですね。僕はそのとき、TV放送を見ていたんですが、当時はまだ「かかと落とし」という名前がないわけです。

 

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三浦 あっ、そうか! まだ名前がなかったんですね。

 

Dr.F 英語では「AX KICK」(斧の蹴り)ですけどね。アンディ・フグのかかと落としは僕も憧れたので、さんざん映像を見て研究したんですが、「かかとだけ」を落としていないんですよ。カカトが当たることはあるんですが。

 

三浦 面白い! 確か、当たるとき、かかとは引いてますよね。

 

Dr.F そうなんです!かかとから入って、つま先を引っかけてるんですよ。

 

三浦 あれは鎖骨に当ててるんですか?

 

Dr.F 上手な人はつま先で目をひっかきますね。あと顔面、顎、頸部など。

 

三浦 目か! 僕はすごくうがった見方をしていて、あれはフグが観客の人気を集めるためと、ジャッジの印象をよくするために使っていた技だと思っていたんですが、目に当ててたんですね。

 

Dr.F フグに限って言うと、第4回世界大会でほとんど世間的には無名でしたが、どんどん勝ち上がってきたんです。彼はかかと落としで、相手のガードを上げさせるのが目的だったんですよ。で、彼が相手を倒した技、効かせた技はローキックなんです。

 

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三浦 なるほど! 確かにそうでした。

 

(その2に続く)

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三浦崇宏 GO (@TAKAHIRO3IURA) | Twitter

二重作 拓也 Dr.F/Takki (@takuyafutaesaku) | Twitter


三浦 崇宏氏の「推薦の言葉」も収録

格闘技医学 第2版

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