スポーツ安全指導推進機構/格闘技医学会

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~古い常識を更新していく~ 波空会/湘南アルト 伊澤 波人代表 合格者インタビュー01

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プロデビューから9戦無敗
 
ーーースポーツ安全指導推進機構では、積極的に安全向上に取り組んでいらっしゃるチームや指導者を取材をさせていただき、そのご活動をご紹介しています。
 
空手道波空会/湘南アルトキックボクシングの伊澤 波人代表は、現役プロ格闘家として大活躍されただけでなく、並行して後進の育成にも真摯に取り組まれてきた指導者でもあります。まずは、伊澤代表のこれまでのキャリアを含む自己紹介をお願いします。
 
伊澤 伊澤 波人(いざわ なみと)と申します。6歳で空手を始め、中3で全日本ジュニア大会で優勝しました。高1の時に新空手の大会で全日本優勝し、高2でキックボクシングのプロデビュー。デビューから9戦無敗のまま10戦目で当時の世界王者であった寺戸選手に敗れました。その後も試合を重ね、22歳で中国で開催された「英雄伝説」という大会で世界トーナメントに出場させてもらい、優勝して世界王者になりましたが初防衛戦で負けて王者から陥落。その後、再び挑戦して王者に返り咲きました。
―――ジュニア選手からスタートされて、プロの舞台でも王者になられたのですね!格闘技選手として輝かしいご経歴はもちろん、王座に返り咲いたお話など、伊澤代表の精神の強さを感じました。指導者としてはどのような道のりを歩まれたのでしょうか?
 
伊澤 25歳の時、それまで所属していたフルコンタクトカラテスクールから独立して、茅ヶ崎に空手道波空会と湘南アルト(キックボクシング)を設立しました。プロとして試合をしながら教え子達に指導し現在会員は100名近くいます。
 

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ーーー空手道場、そしてキックジムにもいろんなタイプのところがあると思うのですが、伊澤代表が目指していらっしゃるのはどのような道場/ジムですか?
 
伊澤 私が目指してるのは『湘南の人達に格闘技や空手を愛してもらう事』です。
私が幼いときからやっている空手や格闘技は本当に素晴らしく楽しいのでそれをより多くの人に知ってもらいたいと思ってます。
 
 
ーーー湘南といえばどうしてもサーフィンのイメージが強いのですが、その地にあって、格闘技の魅力を伝えていかれるというのは素晴らしいですね!
 
伊澤 サーフィンも私自身幼い頃からやっているので大好きです。格闘技や空手も本当に素晴らしいので、皆に知ってもらいたいと思ってます。
 

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更新していく
―――今回、伊澤代表の道場を取材させていたたくことになったきっかけは、代表の合格をきっかけに全ての指導員がスポーツ安全指導講習とテストを受けてくださったことにあるのですが、初回受講時(2021年版)の率直なご感想をお伺いさせてください。
 
 
伊澤 正直怖さ、ショックが大きかったです。指導員として高校生の頃から指導させてもらっていて10年経ちますがまだまだ安全について知らないことがたくさんありました。
 たまたま今まで大きな事故が起きなかったので、運が良かったですがなにも起きない確率は0では無かったので色々と勉強させてもらい改めて『知らなかったことが怖い』と本当に思いました。まずそれが勉強させてもらいなにより感じた素直な感想です。
 
 
―――責任あるお立場の方の率直なご感想を伝えさせていただけるのは、本当に有り難いです。
 
 
伊澤 もちろん、「今回勉強したから100%安全になる」という訳ではないので、勉強は今後も続けて行きたいと思いました。
 
 スポーツ安全指導推進機構のテストは合格から期限があるため更新が必要で。でもそこがとても良いところだと本当に思いました。改めて学ぶいい機会にもなりますし、最新の救命措置やエビデンスなどは、年々向上していくことも、よくわかりましたので。
 
 
―――おっしゃる通り、スポーツ安全もデータの集積と共に変化しますよね。昔は「練習中に水を飲んだら弱くなる」といった危険な情報が常識になっていたこともありますから。
 
 
伊澤 そういう意味でも、古い常識を更新していくのは大切だと私は思います。
 
 
―――安全指導の講座では、命に関わる重大な事故とその防止がかなりのウェイトを占めるわけですが、伊澤代表が特に印象に残った、もっといえばビビったテーマはどれでしたか?
 
 
伊澤 心臓震盪はタイミングで起きる、胸だけではなく腹や背部でも起きる。また子供の脳は隙間が無く、出血したらすぐに危険な状態になるリスクがある。また子供の脳は血管が細い為、外傷に弱く出血のリスクが高い。などなどが特に印象に残りました。
 昔から指導させてもらっているのに知らないことがたくさんあり本当に怖く思いました。
 

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いちばん怖いことは、知らないこと
―――世の中には怖さを知らずに2才の子供に殴り合いの試合をさせてる指導者や保護者もいますので、知らないと怖いと感じることも出来ないですよね。
 
伊澤 本当にそう思います。いちばん怖いことは、知らないことだと改めて反省しました。
 
 
―――知ることによって、伊澤代表の安全意識が向上されたのでしたら、それは大きな一歩だと思います。講義、テストのあと、指導や安全対策に具体的な変化はございましたか?
 
 
伊澤 安全には配慮しながら、無理をさせない指導を心がけてきたつもりでしたが、今まで以上に責任者としてやるべきことが明確になりました。
 例えば、試合に出場した生徒の保護者の方には「頭を打つことは怖い」ことを具体的に説明し、経過を観察していただきつつメールで連絡を取り合っています。
 

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 あと出血等で血がマットについた際にはアルコールではなく次亜塩素酸ナトリウムを使うようにしました。肝炎ウイルス等にはアルコールは有効ではなく、次亜塩素酸ナトリウムが有効だ、とスポーツ安全指導推進機構の講義で学ばせてもらったので。
 

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 2021年の初回は、私とある指導員のふたりで受講させてもらったのですが、その指導員と一緒に復習みたいな感じでたまにテストの問題を出し合ったりして忘れないようにしてます。

 

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ーーーそのような変化があったのですね。伊澤代表のジムは、スポーツ安全指導推進機構の定める講座とテストを、ジムの指導員全員に義務化する、という方針を2021年に決定されました。義務化に至った背景を教えてください。
 
 
伊澤 昨年テストを受けさせてもらいこれはとても大切なことだと思ったからです。テストを受けさせてもらい、すぐに「来年は指導員全員に受講させる」と決めました。

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普通に生活してたら味わえない幸せ
―――伊澤代表から、指導員の皆さん全員、さらには横への拡がりで他のジムの方からも受講・受験の希望があり、改めて伊澤代表が周囲から信頼されていることがよくわかりました。
 いままでジュニア選手、アマ選手、またプロ選手としてご活躍されたわけですが、「格闘技をやってきて本当に良かった!」と実感されることはありますか?そして、格闘技の醍醐味、格闘技の魅力とはなんですか?
 
伊澤 格闘技をやってて良かったと思うことは本当にたくさんあります。
 試合に勝った時、試合に勝って応援団が喜んでくれた時、道場生が「空手が大好きなんだ!」と話してくれたとき、道場生が大会で勝った時など、普通に生活してたら味わえない幸せが沢山あります。
 本当に格闘技をやってて良かったし、格闘技に出会えた自分は本当幸せだなと思ってます。

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 そして、何といっても格闘技の魅力はやはり闘うことです。やっぱり闘うことが私はとても好きです。
 練習でも、試合でも、身体ひとつでお互い殴り合ったのに、なぜか終ったら仲良くなれる。そんな格闘技にしかない魅力がたまりません。

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強くて優しい人を増やしたい

ーーー素晴らしいです。その魅力をたくさんの人たちに知ってほしいと思います。

 

伊澤 ありがとうございます。そのためにも安全の向上は急務の課題だと考えています。

 

―――伊澤代表は、指導者として、どんなことを生徒さんに伝えていきたいですか?また今後のビジョンについても教えてください。

 

伊澤 私が伝えたい事は空手の楽しさ、格闘技の楽しさです。そして皆に心も身体も強くなってもらいたいと思います。優しさだけでも無く、強さだけでも無く両方を兼ね備えた道場生を増やして地元で『うちの地元は波空会があるから安心だ』って、思われるようにするのが夢です。

 

ーーー素晴らしいです。

 

伊澤 悪いやつが居たら波空会の道場生がその人をやっつけて、困ってる人が居たら助ける。みたいな強くて優しい人をたくさん地元に増やしたいと思ってます。

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ーーー波空会の人たちが地元を守る!それは本当に素晴らしい志ですね。カラテ本来の意義にも感じました。最後に、格闘技実践者や指導者の皆様に、メッセージをお願いします!
 
伊澤 私は格闘技実践者でもあり、同時に指導者でもあります。そして指導者にとって安全指導を学ぶことは必要とわかると思いますが、実践者もとっても必要だと私は思います。
 
 安全指導を学ぶことにより、より一層身体のことについて学ぶことが出来、さらに強くなる為のヒントにもなりました。また自身が怪我をした時にどのようにすればいいか?根性出して頑張るのか、それともゆっくり休むのか?これは実践者なら誰もがぶつかる悩みだと思います。
 根性出さなきゃいけない時もあるだろうし、しっかり休まないといけない時もあるし、とても難しいです。でも、そんな難しい壁にぶつかった時のヒントが得られる気がします。ですので、スポーツの安全指導を学ぶことによって、強くなる為の近道になる、と私は思います。
 
ーーー貴重なインタビューをありがとうございました。ますますのご活躍を楽しみにしています。
 
伊澤 こちらこそありがとうございました。格闘技、カラテを愛すればこそ、安全性を高めて参ります!
 
空手道 波空会